研究紹介

国際農村発展論分野では現地調査を基礎に以下の研究テーマに取り組んでいます。

中国

 

ザンビア

(1) インフォーマルな制度や政治と経済活動との関連

徴税や政策遂行能力に乏しいアフリカ諸国では、
フォーマル制度の農村部への影響は希薄であり、伝統的なインフォーマル制度に依拠している部分が大きいです。
特に、首長や村長といった伝統的権威はコミュニティー内の秩序維持の役割を担っています。
ただし、彼らがどのように権力を行使しているかという点は実証的な課題となります。
進行中の研究では、伝統的権威による土地の配分が効率的に行われているかどうかを家計調査データにより検証しています。

また、井戸杭や学校などの修理保全はコミュニティーが担当していますが、
写真の水ポンプのように機能不全に陥ったまま放置されている事例も少なくありません。
持続的な公共財の管理メカニズムを提案する研究を企画しています。

また、ザンビアは72の民族が存在するといわれ、
下の地図で示しているように民族のホームランドは必ずしも行政区分と一致しません。
政策決定過程において大統領の裁量が大きいため、公共サービスの供給は民族に偏った分配になっている可能性があります。
選挙を通じて大統領の出自民族が変わることによる、ザンビア国民の経済行動への影響を分析しています。


(2) 技術採択と家計内交渉

使用すれば高い収益が望める肥料や高収量品種を農民はなかなか採択しないことが報告されています。
その制約要因に関して膨大な先行研究の蓄積がありますが、
理解の進んでいない要因として夫婦間の交渉力の問題に着目しています。
ザンビアの調査地では、同一家計であっても、夫と妻が別々の土地を管理することは珍しくありません。
この点に注目して、新作物(ネリカ米)の栽培を開始するインセンティブを夫婦別々にランダムに与える実験を行いました。
その結果、ターゲットは世帯主でなく、家計内で土地を管理している個人に与える方が需要を喚起することを実証しました。

(3) 家計のリスク対処行動
灌漑整備が未発達な農村部では、旱魃や洪水など天候ショックに脆弱です。
農家は天候ショックにどのように対処しているのか、
その対処策としての天候保険の有効性について、研究論文を発表しています。

 

戦前日本

当専攻では、昭和初期より農業簿記に関する研究を実施してきました。

その様式に基づく農家経済調査が、戦前期に農林省によって行われ、
大正期から戦後に至る全国の記帳結果が研究室で保管されています。

これは戦前期日本の農家経済のミクロデータとなっており、
そのデータベース化が一橋大学経済研究所と共同で行われてきました。

そのデータを用いて、戦前期の農家経済の分析に現在取り組んでいます。

 

タイ

最も貧困者比率が高い地域として知られているタイ東北部農村は出稼ぎが多いことで有名である。
当該地域で農村や生産行動の変化を分析している。